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ゆるやかな速度で

第10章 8.合宿02


なるべく白石くんの負担にならない様にと遠慮がちに彼の肩に捕まっていたのだけれども、彼にそう言われてしまえば抵抗することも出来ない。
私が彼の背から落ちてしまえば、今以上に迷惑をかけてしまうことが明白だったので私はギュッと白石くんに捕まった。
彼の背に自身の体が触れてしまいとても恥ずかしかったけれど今はこうするしかないので私は早く着いて欲しいと願いながら、彼の背に乗せられて運ばれていった。

「それにしても何で金ちゃん達はあないな所から出てきたん?」

暫く無言のままに小道を歩いていのだけれども、白石くんは先程の件が気になった様で隣を歩く金太郎くんに質問を投げかける。
言われてみれば確かに小道は一本道で迷うことなんてあるはずがないのに何故あんな道から外れた場所から彼らが出てきたのか私も気になって彼らの会話に耳を傾けた。

「熊おるんやろ!?会ってみたかったん。せやから熊の家探しとったん」
「…部長が熊おるとか言うたから。遠山が熊探すって、きかんかったんっすわ」

キラキラと瞳を輝かせて話す金太郎くんと、うんざりした表情で話をする財前くんが対照的だった。
そして金太郎くんの発想は予想外だった様で白石くんは驚いてから『すまんかったな』と財前くんに謝罪を述べた。

まさか白石くんの注意を聞いていたのに逆に見に行こうとする人物がいるだなんて白石くんも思っていなかったのだろう。
小さな声で『予想外やった』という本音が私には聞こえてしまって私も小さく頷いてしまったのだった――。

それからは他愛も無い会話をしつつも小道を4人で進んでいく。
白石くんの背に揺られていたら何だか心地よくて私の瞳がゆっくりと降りていくのを感じていた。
こんな所で寝てはいけないと頭はでは思いつつも、白石くんの背中が何故だかとても落ち着くから…それに抗う事が出来なかったのだ。

「【名前】?」

私の名を呼ぶ白石くんの声が聞こえてきたけれども、内心何度も『起きなければ』と自身に喝を入れてみても、心地の良い揺れに完全に敗北してしまい、私は抗うことが出来なかったのだった。
それを察してくれたのか白石くんは私を無理に起こすことはしなかった。

「おやすみ」

そして優しい彼の声が聞こえたと共に私の意識もまた夢の中へと誘われていったのだった――。



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