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ゆるやかな速度で

第10章 8.合宿02


「女の子に突然飛びかかったらアカンで!」
「うう、堪忍。【名前】」

厳しく注意する白石くんの声音に、金太郎くんは普段はあまり出さないような落ち込んだ声音で私に謝罪を述べてくれる。
私は『大丈夫だよ』と彼を安心させる為に軽く告げてから倒れ込んでいた体を起き上がらせていく。

「――っ!?」

きちんと立とうと、ゆっくりと自身の体を起き上がった際に足に力を入れると体に衝撃が走る。
ビリビリと足元から伝わる衝撃に驚き私は顔を歪めてから、思わず下を向いてしまう。
足を見たその瞬間から自分の体の事なのに先程までは一切感じていなかった足首の痛みがジワジワと体を蝕んでいくのがわかった。
この痛みのまま宿まで歩けるだろうかと不安が脳裏によぎったその瞬間だった。

「あの…すんません」
「財前くん?」

先程まで傍観していただけの財前くんが私の傍まで来て話しかける。
彼の方から話しかけられた記憶がなかったので、私は珍しい事に驚いて彼の方を見る。
財前くんは少しだけ怪訝そうな表情をして私の足元を見てから再度顔をあげて私を真っ直ぐ見てから私に告げたのだった。

「怪我してないっすか?」
「!」

私の一瞬歪めた表情を財前くんは見逃さなかったようで、彼は先程確認のために見たのであろう私の足元を指差した。
財前くんの言葉が聞こえていたのか、金太郎くんを注意していた白石くんが私の傍へと歩み寄る。
隣に来てくれた白石くんを見てから私は正直に痛みがある事を告げたのだった。

「その…足が」
「ちょい悪いけど足触るな?」

私の言葉を聞いてから白石くんはしゃがみ私の足を触れても問題ないか確認を取ってくれる。
その言葉に私が頷いたのを見てから彼は私の足に触れる。
すると軽く触れられただけであろう足首に物凄い痛みが走り声にならない悲鳴が私の中をかけていく。
痛みに顔を歪めると白石くんが『堪忍』とだけ軽く謝罪をしてくれたので私は顔を左右にふることしか出来なかった。
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