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ゆるやかな速度で

第10章 8.合宿02


「お前ら…ここにおったんかい。てか白石もミイラ取りがミイラになっとるやないか」
「オサムちゃん」

渡邉先生の声がかかるまで私達は目の前の盤上に視線が釘付けになっていたようで全員が先生の声に我に返る。
先生の方を見れば、先生が苦笑しながら私達を見ていた。
先生の後ろにあるロビーの時計を見れば22時を過ぎており、完全に消灯時間は過ぎてしまっていた。

「ええ勝負しとるとこ悪いけどな、明日も早起きせなあかんし、夜にはお楽しみもあるんやからさっさと寝なきゃあかんで。…てか遠山そこで寝取るやないか」
「あら、ほんまや」
「気付かへんかったわ」

先生の突っ込みに驚いて辺りを見渡せば、金太郎くんは完全に後ろ側にあるソファーに寝転んで寝入ってしまっていた。

「金太郎くん、こんな所で寝てると風邪引くよ?」
「もう食えへんわ」
「あぁ…これはあかんな」

座っていた椅子から立ち上がり金太郎くんに声をかけながら軽く肩を揺さぶってみたけれども寝言を話すだけで彼の閉じられた瞳は開くことはなかった。
そんな私達の様子を見て白石くんは隣で苦笑していた。

「仕方なかね」

そんな私達を見て千歳くんも苦笑してから、彼は金太郎くんを背負うように抱き上げる。
金太郎くんが小柄なのもあるかもしれないけれど、千歳くんはヒョイッと軽々と金太郎くんを抱き上げてしまったので私は驚いてしまう。

「同じ部屋やし、俺が運んどくばい」
「すまんな、千歳」
「よかよか。それより、オセロん勝負はお預けばい」

千歳くんは白石くんにそう告げると金太郎くんを抱っこしたままスタスタと歩いていってしまう。
もし彼の言う通りにまた白石くんと千歳くんのオセロの勝負があるというのなら見てみたいなと私は思った。
それぐらいに先程までのオセロの内容が凄かったからだ。
誰も口出し出来ない程に白熱した試合で私達は誰も声援すら声に出すことは出来なかった。
2人の手に汗握る攻防戦は凄いとしか言いようがなかった。
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