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ゆるやかな速度で

第10章 8.合宿02


「負けました」
「いやぁ、【名前】…結構強かばい」
「そんな。どう見ても千歳くんの圧勝だと思うけど…」

先程までの勝負は思ったとおりで千歳くんの圧勝で終了した。
目の前に広がるオセロの盤面を見てからも、どう考えても彼の圧勝なのに千歳くんは私の事を褒めてくれるので私は少しだけ困ってしまう。
彼は私に気を遣ってくれての発言なのだと思う。
千歳くんは一見フワフワとして掴みどころがない様にも見えるけれど、こうした気遣いが出来る素敵な人なのだなと思った。
けれどこの盤上はどこからどう見ても彼の圧勝としか言いようのない状態で私は素直に彼の賛辞を受け取る事が出来なかった。

「この内容は健闘しとったと思うよアタシも」
「小春くん…ありがとう」

私がそんな事を考えていると小春くんも脇から激励を投げかけてくれる。
どうして良いかわらない私にいつもこうして助け舟を出して優しくしてくれる小春くんに私はとても感謝していた。
彼の方へ視線を向けると、にっこりと笑って私を見ていてくれる小春くんの横で少しだけ不機嫌そうに私を見ているユウジくんがいた。
ユウジくんは小春くんの事を大切に思っている様だし、きっと彼からしたら私の存在は面白くないのかもしれない。
私の方を見て不機嫌そうにしている彼を見て、まだ完全に異性の事を克服しきっていない私はどうしたら良いのかと1人で勝手にオロオロとしていると、私達の後ろから聞き慣れた声が聞こえてきたのだった。

「みんな、こんなとこおったんか」
「あ、白石!どないしたん?」

白石くんの言葉にいち早く反応したのは金太郎くんだった。
元気のいい金太郎くんの返事に白石くんは苦笑しながら言葉を返す。

「どないしたん?…じゃ、ないやろ。みんな、そろそろ消灯の時間やで」

苦笑しながら彼に注意をされて私は驚いてロビーの壁にある時計に目を向ければ結構な時間になっていた。
オセロに集中していて気が付かなかったけれど、もう時計の針は21時を過ぎてしまっている。
確かにそろそろ部屋に戻らなければと思った矢先に白石くんが私達が囲んでいたテーブルへと目を向ける。
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