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ゆるやかな速度で

第10章 8.合宿02


「千歳なぁ、めっちゃオセロ強いねん。確か前に【名前】とワイがやった時も敵わへんかったの思い出した瞬間に【名前】が来たからええかと思って」
「あの…私が金太郎くんとオセロやったのってかなり前だから多分もう金太郎くんの方が強いと思うけれど…」
「俺としては【名前】とも対戦してみたかね」

金太郎くんの言っている対戦の話はもう何年も前の話だった。
あの頃はまだ金太郎くんも私も小学生だったし、2つも離れていたので私の方がたまたま年の功ですんなり勝てただけの話だった。
最近はオセロで遊ぶ様な事もなくなってしまったので自身の実力は分からないけれども、金太郎くん達の期待にそえるようなことが出来るとは今私の目の前に広がるオセロの対戦結果を見て思う。
綺麗に片方の色だけに染められたオセロの盤上は明らかに千歳くんの圧勝さを物語っていた。
いくらなんでもここまで綺麗にすることが出来るということは千歳くんが相当強いということが伺い知れる。
だからこそ私と対戦してもそこまで熱戦になることも無いだろうと、申し出を断ろうとしたのだけれども、にこにこと笑う金太郎くんと千歳くんの視線が私に突き刺さる。
どうしようかと視線を泳がせると、ふと小春くんと目が合う。
彼は優しく微笑んでから一つの提案を私に投げかけてくれたのだった。

「別に身構える必要なんてあらへんと思うよ?気軽に【名前】ちゃんが楽しめばええと思うわ」
「小春の言うとおりやで。別に今何かをかけて勝負するわけやあらへんし、千歳に絶対に勝たなあかんわけでもないやんか」

小春くんの言葉に続いてユウジくんが呆れながら私にそう告げる。
その言葉が予想外で私は呆けた顔をしていたのだろう。
私の顔を見てユウジくんが少しだけ吹き出したのが分かった。
おかしな表情をしてしまったのが少し恥ずかしくて頬が熱くなるのがわかる。
そんな私を見ても特に誰も茶化すことはないこの空間がとても有り難く思えた。
そして私は小春くんとユウジくんから言われた言葉を自身の中で咀嚼する。
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