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ゆるやかな速度で

第10章 8.合宿02


今日の合宿も無事に終わって良かったと一安心しながら、私はお風呂を終えて自分の部屋へと帰る最中の事だった。
確かにまだまだ私には足りていない部分も多いけれど少しずつだけ何とか様になってきているので良かったと私にしては珍しくポジティブ思考でホテルの通路を歩きロビーに差し掛かる場所を通り過ぎようとした時の事だった。

「あ!【名前】や!」

急に声をかけられて驚いて声の方を見れば金太郎くんがこちらを見て手を振っていた。
そして私が彼に気付いた事がわかった瞬間に金太郎くんの手がこっちへ…と私を呼び寄せる動きへと変化をする。

「【名前】!こっちや!」

何かあったのかと思い、小走りで金太郎くんの方へと駆け寄ると、そこではホテルのロビーにあるテーブルを取り囲む様に数名の人物がいた。

「【名前】ちゃん。いらっしゃい」

私を歓迎するかのように小春くんが笑顔で出迎えてくれる。
その彼の横にはユウジくんが小春くんと同じ様にテーブルを見るように立っていて、そのテーブルを挟んで向かい合わせで椅子に座っていたのが金太郎くんと千歳くんだった。
テーブルの上には対戦が終えた後のオセロ板が乗っていた。
多分だけれど、丁度対戦が終了して金太郎くんが後ろを向いた時に歩いている私が見えたのだろう。
先程まで椅子から立ち上がっていた金太郎くんは大人しく座り直していた。

「【名前】も千歳とオセロしようや!」
「私が千歳くんと?」
「せや」
「あら、それは面白そう」

金太郎くんがニコニコと無邪気に私をオセロへと誘う。
それを聞いて小春くんも面白そうと楽しそうに微笑んでいた。
でも自身に話をふられるとは思っていなかった私は驚いて言葉に詰まってしまう。
そんな私を特に気にする事もなく金太郎くんはニコニコと話を続けていく。
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