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第3章 気付くのはいなくなってから


いよいよ豊玉高校との試合が始まった。


チーム全体に緊張感はなく、普段通りリラックスした様子が感じられた。その大きな要因は翔陽応援団の声援だと思う。いつも通りの安定した応援は絶対に選手達の大きな支えとなっている。それとは反対側の客席には豊玉高校のギャラリーが多数押し寄せていて、汚い野次がこぞって聞こえてくる。熱狂的なファンやOBが多そうな雰囲気だ。こちらも応援団に遠征して来てもらって本当に良かったと思う。


「藤真!頼んだぞ!」
「はい!」


斉藤くんから藤真へのパスが渡り、藤真はそのままスリーポイントシュートを決める。調子は絶好調とみた。斉藤くんのプレーは一年生の時からずっと見ているし、大好きだ。彼が一年生の時は翔陽始まって以来のエース、なんて言われていたし、ずっとずっと翔陽を背負ってきた。だけど藤真が入部してきてから――――――斉藤くんはいい意味で肩の力が抜けて、挑戦的なプレーができるようになったと感じる。それは藤真が上手くチームを動かしているからで、チーム全体に気を配り、みんなの長所を活かすプレーを引き出せるからだ。


藤真の凄さはそこにある。身長だってバスケットの選手にしてはそこまで大きくはないし、ジャンプ力でもパワーでも同じ2年生の花形のほうが上だろう。――――それでも。




華やかな藤真のプレーは、観る者を必ず惹きつける。



そして今はうちがディフェンスに回り、豊玉の中でもガンガン点を取っている南という選手には藤真が付いた。必死にボールカットを狙って藤真が腰を落とした瞬間、




ピピ――――――――――――――!!!!!




相手選手と何か話しているなと思ったら、すでに藤真は倒れていて。コートの床には血が広がる。積極的にボールを奪いに行く藤真が、相手選手と接触して倒れることはよくある。だけど今日の藤真は、起き上がってこない。


「ふ、藤真っ………!!」


慌てて救急箱を持って藤真に駆け寄っていくと、審判の男性が「救急車を呼びます。それまでは大会常駐の先生に応急処置してもらうから、下がっていなさい」と、救急箱からありったけのガーゼを取り出して藤真のこめかみに当てながら私達翔陽のメンバーに伝える。
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