第1章 邂逅。
心臓が、止まった気がした
実際は気がしただけで、今も健在にリズムを奏でているのだけど、シャルナークと、クロロ。この2人が..現実に、いるんだ。
未だ信じられなかったが、心が現実だと、現実であってほしいと告げているのだから、夢だとしても、今は現実でいいのだと思う。
「ん..シャルナーク、あの女性は起きたのか...起きたと言うより、号泣しているな..何かしたのか..?」
目をゆっくりと開き、長いまつげを艶やかに流しながら、こちらに目を向けるクロロ
髪は下ろされており、団長モードというよりは、プライベートモードといった様子だ
一方で、シャルナークも考えていた
(まいったな、急に泣き出すし、念は使えないし...どうしたもんか..)
団長にお手上げというポーズをしてみせると、団長が立ち上がる
(シャルナークが何かをした、ということはないのだろう。俺の盗賊の極意が出なかったことを鑑みて、ここでは念が使えない。まぁ男が2人、起きたら見知らぬやつがいたというだけで、充分怖いだろうが、あれは、怖いというより..嬉しい..?感動..?負の感情を全く感じない泣き方だ。恐怖や混乱で泣いているというより、信じられない、困惑、嬉しさ、切なさ、そういう気持ちが混ざったような泣き方のような..まぁ、聞けばわかるか)
クロロは人のいい笑みを浮かべて彼女に話しかける
「やぁ、お嬢さん。俺はクロロ、クロロ・ルシルフル。気がついたらこの部屋にいて、決して怪しいものではないんだ。信じて貰えないと思うが、俺達も混乱している。できれば、ここがどこなのか、今がいつなのか、教えてくれないかい?」
ハッとしたように彼女は慌ててベットから起き上がり、少し恥ずかしそうに髪を手で梳く、そしてベットの上に正座して、口を開く
「私は、桜宮..蒼空といいます。ここは、平成29年、7月18日の、日本の福岡県です。」
(やはり、この状況といい、まさかとは思ったが、異世界と言うやつか..参ったな。今のところ情報源はこの女性..サクラミヤ・アオゾラしかいない、か)
元々旅団の頭脳であるシャルとクロロは嫌でもこの状況を理解し始めていた
(やっぱり、団長も気付いたみたいだね、恐らくここは僕達の世界とは違う世界。情報源は彼女だけ、...んー、厄介な事になったなー)