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【イケメン戦国】 時を翔ける巫女

第9章 貴方と過ごす安土~秀吉編~


 三成が去ったのを見送って俺は珠紀と向かい合った。

「珠紀」
「はい」
「怖い思いをさせて、悪かったな」
「そんなこと……」
「いや。一応戦闘にはなったんだ。疲れただろう。湯殿にでも入って先に休んでろ。今度、礼をする。じゃあ、またな」

 踵を返そうとした時、袖を引かれて振り返ると、微かに眉を吊り上げた珠紀が俺の顔を覗き込んでいた。

「な、何だ……?」
「礼というなら、お願いを聞いてもらえますか」
「あ、ああ。何だ?」
「信長さんへの報告が終わったら、ちゃんと休んで下さい」
「は……?」
「今回の件だけではなくて、本能寺の件から忙しくて相当疲れているんでしょう?」
「別に、疲れてなんか――」

 そう言おうとした矢先、珠紀の華奢な指が俺の唇に触れて言葉が塞がれる。

「じゃあ、この濃~い目の下の隈はどう説明するんですか。私には気遣いも、平気な振りもしなくて良いです」
「お前、そんなことで怒ってるのか……?」
「そんなことじゃないです。秀吉さんは織田軍にとっても、この安土にとっても大事な人なんだってことぐらい、ここに来て日にちが浅い私にでも分かるんです。自分を大事にしてください」

 必死な声と真剣な瞳に、息が詰まる。

「まったく……急に怒り出したかと思えば、何だその可愛い理由は」
「え……?」
「あー……いや、とにかくだな。誤解してるぞ。俺は無理に笑ってなんかない」

 そう言うものの、珠紀は眉間の皺を寄せて疑うようにじっと見つめてくる。

「言っとくが嘘じゃないぞ。お前が無事で嬉しいから笑ってるんだ。お前は妹みたいなものだからな」
「それは今どうでも良いんです」
「た、珠紀……?」
「小物とはいえ、多少なりとも妖気にあたっているから支障は後から出ると思うので、倒れる前に休んでください。
妖モノに詳しい私の助言は聞いておいて損はないと思いますけど?」

(うーん……引く気なしって顔だな)

「私で手伝えることやして欲しいことがあったら、今日じゃなくても良いので、いつでも言ってください。
私に出来ることは限られてますが……時としては頼りにしてください。無理にとは言いませんが」

 妙に胸がざわつき、熱くなる。

(頼って欲しいって……言ったことはあっても、言われたこと、ないな。こんなに、嬉しくなるもんなんだな)

「珠紀は変わってるな……」
「よく言われます」
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