第10章 貴方と過ごす安土~三成編~
結果、私は微かに息を切らしてその場に両膝と両手を突いていた。
三成君に手の平をかざしてみたり、髪の毛をいじってみたり、頬を突いたり、肩を揺すったりしてみたのだが反応は一切無し。
(だ、ダメだ……全然気付かない……)
クスクスと小さな笑いが耳に届く。興味に彩られた何対もの視線も感じ、見やると老婆の小物だけでなく、部屋の梁に、本や三成君の陰に、隠形していた雑鬼達が二人をじっと見ていた。
彼等は老婆の小物のように名前のあるような大層な妖怪ではない。本当にその辺に棲息している、小さいものから子供程の大きさの妖達だ。
こちらに害を与えるようではない様子ではある。だが興味の対象にしてはあからさまだ。気配を絶っているだから、気付かれないようにそっと様子を伺ってくるくらいが可愛いのだが。現段階では妖達のことは無視する。
(仕方ない、こうなったら)
私自身は悪戯や不要の声掛けによる読書の邪魔をされるのは好かないのだが、三成君に対してはどうやら大きな声を掛けるしかなさそうだ。
三成君と同じ目の高さになろうと腹いばらになり、周囲の本の山を崩さないように気を付けながら、膝を曲げ足先はプラプラと遊ばせる。そのまま本を持っている三成君の手首を掴んで素早く本を閉じる。
「……?」