第9章 貴方と過ごす安土~秀吉編~
「怪我は?」
「大、丈夫です…」
「……そうか」
たどたどしいながらも得られた答えに大きく息をつく。
気が緩んだせいか、忘れていた痛みがぶり返してきて、俺は思わず顔をしかめて左肩を押さえた。そんな俺を見た珠紀は息を飲み、俺を支える。
「っ…!秀吉さん、まさか――」
顔色を青くさせた珠紀に内心舌打ちしながら、俺は言葉を紡ぐ。
「大丈夫だ」
「でもっ…!」
「大した傷じゃないから安心しろ。お前が無事で良かった」
心からそう言い、俺は珠紀を安心させるようには笑んで頭を撫でる。
焦りながら不満気な顔をした珠紀は、無我夢中で俺の左肩を触診しようとしてきた。
心配してくれることは有難いが、これ以上辛い顔をさせたくなくて珠紀を押さえようとするが、動く度に肩に痛みが響く。顔をしかめたその時――耳に陶器が割れるような音が届いた。
「……ん?」
すると、突然肩の痛みが消えた。
起きたことに理解が追い付かず、俺は動きを止めてぱちぱちと数度瞬きをする。
自分の左肩を見てゆっくりと回してみる。さっきまで冷や汗が浮かぶまで感じていた痛みが跡形もなく消え去っていた。
「…痛みが……」
(何でだ?さっきまで、確かに痛みがあったのに……)
俺は夢でも見ているのだろうか。心底不思議な気持ちで肩が大丈夫か確かめる。
「ひ、秀吉、さん……?」
「痛みが消えた…」
「えっ…⁉︎ ほ、本当に……?」