第9章 貴方と過ごす安土~秀吉編~
「話を聞く限り信長さんの考えに賛同してたわけじゃなさそうですし、その人は感情のままに動く人なんだと思います。
謀反起こす人は、ついでに一矢報いてやろうとするのが定石だと思うので、人脈が広くて有能な右腕の秀吉さんを取り込む。もしくは戦力削りの為に消そうと動こうとして接触してくる為ではないかと思います」
「…成程な」
「噂は、同志を増やすことや武器を買う為にたくさんの人と交流していることをカモフラ……誤魔化そうとしている為でしょう。
それなら、もしストレ……鬱憤晴らしを主にしつつ動いたとしても、呆れた噂があれば、そんなに怪しまれません。
今回は全くの無意味な形になってる気はしますけど」
うっかり出そうになる現代語を置き換えながら意見を述べる。ふと見ると、秀吉さんの眉間には深い皺が刻まれている。
(まぁ、信長さん大好きの秀吉さんからしてみたらそうなるか…)
私は秀吉さんの肩を優しく叩いた。
「秀吉さん、これはあくまでも個人的な意見なので気にしないで下さい。眉間の皺、取れなくなりますよ」
「あ、あぁ。悪い」
秀吉さんは慌てて表情を緩めた。
「小娘でも頭は悪くないようだな」
見ると、光秀さんが笑みを浮かべてこちらを見ていた。
だがその瞳の中には揶揄っている気配はなく、文字通り感心している光が見える。
「信長様も珠紀と同じ考えだ」
「そうか」
「秀吉。その大名の処遇はお前に一任するとの信長様からの言伝だ」
「分かった」
「奴はもう安土の近くまで来ているらしい。おそらく明日くらいにはここを訪ねて来るだろう。用心しろよ」