第9章 貴方と過ごす安土~秀吉編~
「秀吉さんの話から考えるに…もうかれこれ、二週間は床下に住み着いていることになると思います」
「に、二週間っ⁉」
数人の叫びが耳元で響き、私は顔をしかめた。
「……耳元で叫ばないで下さい。鼓膜が破れる」
「珠紀、どういうことだ⁉」
ガンッ! ガンッ! ガンッ!
私は迫ってきた三人の頭を手刀で殴った。
「落ち着いて下さい。害はありませんし、ちゃんと説明するので、ちょっと黙ってて下さい」
私は頭を押さえてうずくまっている秀吉さん達を無視しつつ説明した。
「名工に焼かれた茶器は、欠けて捨てられた後、大地の力を吸って妖モノになることがあります。それが影茶碗です。
そして影茶碗は人恋しくて、古い民家の床下に住み着き、その家に災いが訪れる時、家中を走り回って知らせたり、気紛れに身代わりとして災厄を受けてくれたりすることもあります」
「珠紀様は、随分御詳しいんですね」
三成君の感心した笑顔に私は言葉を詰まらせた。
「…まぁ、多少は。あいつは、呆れば勝手に出て行くので、心配は無用です」
「……そう、か」
「それでお前は秀吉に近々訪れるであろう災厄を気にして滞在したいってわけか」
政宗さんの言葉に私は頷いた。
「はい。織田軍としてや武将としての務めでしたら、それはもう秀吉さんに一任するつもりですから、御心配なく」
(ただ単に乱世での厄介事か、妖モノか……
それとも私が災厄を招いているの…?織田軍にこれ以上迷惑を持ち込んでしまったら……
とりあえず、秀吉さんが政務に集中出来るように、私がやれることは何でもやろう)