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【イケメン戦国】 時を翔ける巫女

第3章 森にて


「ってかお前、傷だらけじゃねぇか!しかも、煤だらけだし。
こんなところで何してるんだよ」

 言われてみれば確かに酷い有様だった。
身に付けている長袖のシャツやジーンズは見事に汚れ、あちこち破れていた。自分の姿に呆然としていると―――。

「……え、もしかして、珠紀さん⁉」と声が聞こえた。
「佐助、知り合いか?」

 佐助と呼ばれた忍者のような人が私を見て目を見開いている。

「えっ…佐助?」

 男性は口元を隠していた布を引き下げた。見知った顔が現れて、私は思わず彼に駆け寄り、思いっきり抱きついた。

「本当に、本物の佐助君⁉嘘⁉これ、現実?」
「ああ。幸運なことに現実だ。熱烈な歓迎をありがとう。元気そうだね、珠紀さん。別人で驚いたよ」

 佐助はそう言いながらポンポンと優しく背中を叩いてくれる。

 佐助は私の幼馴染だ。だが私の家の事情もあって幼少時以来、ほとんど会っていない。
私は久し振りの再会に、佐助に抱きついたままピョンピョンと跳ねた。

「それはこっちの台詞だよ。ふふふ。佐助君がイケメンになっててびっくり。
本当に久しぶりだね。もうかれこれ…六年ぶり?」
「正確にはもう少し時間が経ってることになるから、そうとは限らないかな。
俺は大学院で宇宙物理学を勉強しながら、趣味でタイムスリップについて研究してたんだけど、今から四年前にここに飛ばされたんだ」
「……もしかして、佐助君も雷に打たれて?」
「うん。あれ?ってことは……」

 佐助の言わんとすることを察して私は頷いた。

「……私はついさっきなの……大学院って…ひょっとして、本能寺跡で白衣着てた?」
「ああ」
「じゃあ、あの時に会えてたんだね!」
「色々と凄い再会になったみたいだね」

 私は少し冷静になるために深呼吸をした。

「えっと要は、あの雷が原因で時空とかが歪んで、私達はこの戦国時代にタイムスリップした。
でも何故か私と佐助君では四年というタイムラグが起きた。ってことで合ってる?」
「ああ。珠紀さんは話が早くて助かる。
原理の説明は省くけど、解釈はそれで合ってる。それにしても、四年も時差があるのは計算外だったな」
「だからそんな格好してるの?」
「うん。無職ではいられないからね。せっかくだから猿飛佐助って名乗ってる」
「さすが」
「お前ら、仲が良いのは分かったから、俺達にも分かる会話をしてくれ」
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