第7章 妖討伐(2)
私は慌てて身を起こそうとすると、察した家康さんは溜息を吐きながら手を添えてくれて、褥の上にようやく座れる。私は袖で三成君の涙を拭ってあげた。
「泣かないで、三成君。大丈夫。私、こんなところで死んだりしないから。でも心配かけてごめんね」
「珠紀様…」
(しっかし、身体中が痛いなぁ…)
顔をしかめる私に、家康さんがポンと背を叩く。
「ずっと寝てたんだから仕方ないよ」
「うん…」
笑って俯いたその時、私のお腹がキュルルと鳴った。私は真っ赤になってお腹を押さえる。
(嘘っ、またっ⁉)
そんな私を見て秀吉さん、家康さん、三成君が笑みを浮かべる。
「前にもありましたね、この状況」
「えぇ、懐かしいです」
「そう恥ずかしがるな。何せ三日も眠り続けてたんだからな」
秀吉さんが笑いながら頭を撫でてくれる。
「三日も⁉」
驚いて目を見開く。
(ぶっ倒れて数日意識を失うとか小説の中だけの話だと思ってた…本当にあるんだ、こんなこと……)
「珠紀、起きてるかー?」
声の方を見れば、返事をする前に襖が開き、盆を持った政宗さんが立っていた。
「あ…政宗さ――」
そこでまたもや私のお腹が鳴る。恥ずかしさのあまり私は、布団を持ち上げて顔を隠した。
「〜〜〜〜〜っ!」
政宗さんはきょとんと目を瞬かせていたが、次の瞬間吹き出した。
「ぷははははっ。そんなに主張しなくても飯は逃げねぇから安心しろ。
急に消化の悪いものは食べれねぇだろうから、とりあえずお粥を持ってきた。
家康、珠紀は食べても平気か?」
「多分大丈夫だと思います。何より、珠紀の身体が食べたいって言ってますし」
「ククク。だな」
(は、恥ずかしい……っ)
「ほら。顔隠してないで食え」
そう言われておずおず布団を下ろすと、目の前に湯気の立つお粥の乗ったお盆が置かれた。そして流れるような所作で匙を口元に持って来られた。
「え…っ。いや、あの…っ」
「いいから。ほら、口開けろ」
いくら拒んでも政宗さんは口元に匙を押し付けてきて、私は諦めて渋々口を開けた。
いつもより柔らかめに作られた粥には、丁寧にほぐされた白身魚が煮込まれていて、優しい塩分が口いっぱいに広がり、何日も何も食べていなかった胃袋を通じて身体まで温かくなる。
「美味しい…」