第7章 妖討伐(2)
「待て、珠紀!」
秀吉は珠紀に手を伸ばすが、政宗がそれを阻み、首を横に振る。察した秀吉は、きつく拳を握りしめて珠紀を見た。
珠紀はどこかをはっきりと見据えながら自分達と距離を取っていく。
おそらく珠紀は軍議の時に言っていた妖モノと戦っているのだろう。だが、自分の目には何も視えない。それに自分を庇ったことで珠紀は傷を負った。
腕に覚えがあるのに助太刀出来ない歯痒がさに秀吉は唇を嚙んだ。
私は秀吉さんと政宗さんと十分な距離を置くと、切っ先を大男に向けた。
「さぁ来い。私は、お前を倒す方法を知っているからな。逃すと厄介だぞ」
《おのれ…調子に乗るな、小娘。嬲り殺しにしてやる》
唸った大男が腕を鞭のように何度も跳ね上げ、縦横無尽に振りかざしてくる。鋭い爪をかわしたり木刀で弾いたりしながら、私は問いかけた。
「……その妖気…まさか他の視える人も…」
《ヒヒヒ……私は人間が嫌いでね。あいつらが怯える姿を見るのか実に愉しくてな。時にはお前のように喰べるのを少し先延ばしにしてやったりしたよ》
「くっ……そんなの不条理だ!」
《自然とは常に不条理なものさ。それを嘆くのは人間だけだ。約束や決まりなど、守ってやる義理もない》
「…………そうか」
私はそう呟くと素早く動いて大男の眉間や首、肩、手などを力任せに打ち付けた。
《ぐっ!ぐあっ!》
「ならばこちらも手加減なしだ」