第2章 出会い
秀吉さんは安堵の息を吐き、ふと、私に気付いて鋭い視線を向けてきた。
「……何者だ、お前?」
「この女のことは気にするな」
「…はっ」
信長さんに言われ、何か言いたげではあるが、秀吉さんが食い下がる。
(うわっ、絶対服従だ…)
呆然と成り行きを見ていると、信長さんが私の顎を掴んだ。
「……っ⁉」
思わぬ不意打ちと端正な顔が迫ったことで、思考が停止する。
「俺の興を引いたこと、命を救ったことの次に褒めてやろう。
面白い、気に入ったぞ。幸いを運ぶ女に違いない」
信長さんは私の顎を軽く掴んだまま、上向かせた。
「貴様、天下人の女になる気はないか?」
(……へ?)
何を言われたのか理解する間も無く、私は無意識に信長さんの手を振り払い、森へと全速力で駆け出した。
突然起きた行動に信長をはじめ、武将達は呆然としてその場から動けなかった。
しばらくして信長が肩を揺らして笑う。
「ふっ……くくくっ」
「楽しそうですね、信長様」
そんな信長を見て、光秀が口角を上げる。
「俺から逃げようとは、益々面白い。秀吉」
「は」
「政宗と合流して奴を連れて来い。俺は先に戻る」
「……御意」
信長はそう告げると羽織を翻した。