第2章 出会い
「信長様!」
後ろからの声に振り向くと、柔らかな印象の男性が馬から降りて駆けて来ていた。
「三成…?」
「秀吉様の命で参りました。よくぞ御無事で……」
「この女のお陰で大事ない。
何者なのかは俺も知らん。だが、この女が俺を刺客から救い、外へ連れ出したのだ。
珠紀、俺の配下の者に挨拶しろ」
「どうして私があなたの命令を聞かなきゃならないんです?」
思わずムッとしてそう言い返すと、信長さんの目が冷たく光る。
「俺に従わない気か、貴様」
「……っ」
その眼光の鋭さと別段怒っている表情にも見えないのに、思わず肩がビクッと跳ねるが、恐怖を押し込めて信長さんを睨み返す。
「従うも何も、初対面のあなたに私が従わなきゃならない道理がないでしょう。主従関係でもないのに」
私の答えに信長さんと三成さんは目を見張った。
(それでも挨拶は必要か)
そう思い直し、私は改めて三成さんに軽く頭を下げた。
「どうも、初めまして」
三成さんは我に返ると、爽やかな笑顔を返してくれた。
「私は石田三成と申します。信長様の右腕である秀吉様の元で側近を務めている者です」
(また有名な武将の名前が……)
この場に不釣合いのエンジェルスマイルをしてくれる三成さんの登場に、私は肩の力が抜けていく。
「御館様の命を救っていただき有難うございました…それにしても、珠紀様は何故 本能寺に?」
「えっと……」
(やっぱりそうなるよね……
でも、何が起こったのか、こっちか説明して欲しいくらいなんだけどな…
正直に話しても頭打ったとか何とか言われそうだし……)
事情を言おうか迷っていると、白銀の髪をした長身の男性がやって来た。
「御館様、御無事でしたか」
「光秀……?」
(光秀って…まさか、明智光秀…⁉本能寺の変の犯人って言われてる……)
「敵に狙われていると聞き馳せ参じましたが…慌てる必要はなかったようですね」
その言葉を聞いた信長さんは鼻で笑った。
「笑わせる。これまでに貴様が慌てたことなど一度もないだろう」
「信長様!御怪我は⁉」
間を置かず、今度は茶色の髪の男性が血相を変えて駆け込んで来た。
「秀吉か。大事ない」
(今度は豊臣秀吉⁉)