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【イケメン戦国】 時を翔ける巫女

第7章 妖討伐(2)


「どうじゃ?」

 尋ねてくる老人に私は笑顔を向けた。

「ぴったり身体に馴染みます。素晴らしい腕ですね」
「褒めても何も出ないぞ」

 そう言いながら、老人の顔はにこやかだ。私は一度弓を床に置き、老人に向き直って頭を下げた。

「突然の依頼を受けていただき、有難うございました。お陰で、私は奴と戦えます」
「……気を付けてな」
「はい」

 私は再度深く頭を下げると、小屋を後にした。秀吉さんはその後をついてくる。
いくら歩みを進めても、秀吉さんの気配が背後から消える事がないのにしびれを切らした私は、口を開いた。

「………いつまでついてくる気ですか」
「決まっている。お前を見届けるまでだ」
「死にたくなければ、城に帰って下さい。私が城で言ったこと、まさか忘れたわけじゃありませんよね?」
「それは……」

 私は溜息を吐いて秀吉さんに向き直った。

「これは私が撒いた種。始末は自分で付けます。では」

 秀吉は、遠ざかっていく珠紀の背中を何とも言えないような顔で見つめた。
そこにクククという笑い声が耳に届く。見ると、光秀と政宗が路地から顔を出して笑いを零していた。

「何だ」
「いや、なに。随分あの小娘に踊らされていると思ってな」
「お前の世話焼きは病気だな」
「はぁ?」
「趣味みたいなものだから仕方ないだろ」
「誰が趣味だ!」
「そんなことより、追いかけなくて良いのか」

 ニヤリと口角を上げる光秀の言葉に慌てて振り返るが、珠紀の姿はどこにも見えなかった。

「あ、しまった!」
「光秀。お前はあいつの場所を知ってるんだろ?教えろよ」

 光秀の肩に腕を回した政宗が顔を覗き込む。光秀は笑みをたたえたまま政宗の腕を払い、城に向かって歩き出した。

「城裏手に広がる草原に、面白い奴がここ数日いるそうだぞ」
「へぇ」

 政宗は面白そうに言うと、再び珠紀が去って行った方向を見据えた。
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