第7章 妖討伐(2)
翌日、私は身体を何か温かいものに包まれている感触に目を覚ました。視界には見覚えのある羽織が……
(これは、光秀さんの……城には連れ戻されなかったみたい)
印は相変わらず広がっているものの、熟睡したお陰か少し身体が軽い。
(昨日の今日で弓はまだ出来ないだろうから、ここの視察と土地の調査かな)
立ち上がってとりあえず辺りの妖気を探る。少なくとも、影や印をつけた奴はいなさそうだ。
《随分寝ていたな》
「!」
見ると、真上の枝に昨日の小物が寝転がっていた。
「どうしてここにいるの?」
《簡単さ。暇潰しだよ》
(暇潰しって…)
《視えて怯えない奴も話すもの久し振りだからね。それに、お前を見てれば面白いことが起こりそうだ》
「あなたにもこの苦労を分けてあげたいなぁ」
《それは御免被る。傍(はた)から見ているのが一番面白い》
(……光秀さんと妖モノって、似た者同士なのかも…ま、良いか)
私は久しぶりに妖モノとの会話を楽しみながら、足を踏み出した。
その後何事もなく数日が過ぎた。
私は人目を盗んで老人の小屋へと向かう。
(今日が約束の日ではあるけれど……さて、どうなったかな)
人目のつかない細道を通り、老人の小屋が見えた途端、私は思わず足を止めた。
「げ…」
そこには、腕を組んで仁王立ちで待っている秀吉さんの姿があったのだ。
冷静に考えれば、取りに行く日は秀吉さんも政宗さんも知っているし、軍議で自分の話が上がらないわけがないのだ。
(盲点だった…)
思わず片手で頭を抱えるが、逃げるわけにはいかない。私は頬を叩いて気合を入れた。
「…よし!」
私は秀吉さんに向かって歩き、わざとおどけた風に言ってみせた。
「秀吉さん。こんなところで、何してるんですか?」
「! 珠紀!」
秀吉さんが慌てて私に駆け寄って来る。
「意味不明な置き手紙なんか残して、今までどこに行ってたんだ!」
タレ目を釣り上げて開口一番に怒られ、思わず肩が跳ねる。
「どこって…ん?意味不明?」
答えようとして、秀吉さんの言葉に引っかかり、思わず聞き返す。