第6章 妖討伐(1)
同時刻。広間で武将達は軍議を終わらせて珠紀について話し合っていた。
「――して、秀吉。政宗。奴の様子はどうだった」
信長が第一声を放つ。
「城下に着いて、最初に連れて行ったのは弓矢です」
「弓矢?」
家康が意外そうに問う。
「あの子、弓出来るんですか?」
「不要な詮索はするなと叱られたよ」
政宗は肩をすくめた。
「そういえばあいつ、会った時に木刀を持ってたな。武芸の心得はあるんじゃないか。腕はどの程度か知らないが…」
「珠紀さん、すごいんですね」
「褒めるところじゃないから」
目を輝かせる三成に対し、家康はげんなり突っ込む。
「それに加え、あの小娘はなかなかの切れ者かと」
妖艶に微笑む光秀の言葉に全員の視線が集まった。
「何か分かったのか」
「……私が女中として傍に置かせた斥候を見抜きました」
「なにっ⁉」
「なっ⁉」
「ほぅ」
驚愕で目を見開く秀吉、家康、政宗、三成に対して信長は、感心したような面白そうな顔を浮かべた。
「それで書くものと木刀を要求してきました」
「…っ。密告書でも書くつもりか⁉」
秀吉が前のめりになって問い詰める。
「そんなつもりはないそうだ」
「信用出来るか!」
「信用出来ないなら見張りをつけても構わないそうだ」
「なら俺が――」
「良い、秀吉」
意気込んで見張りを申告しようとした秀吉の言葉は、信長によって遮られた。
「し、しかし…」
「好きにさせてやれ。ただし、報告は怠るなよ、貴様等」
「御意」
武将達はそう言って頭を垂れた。口角を上げる信長は、先に起こる出来事が何か楽しみにしているようだった。