第6章 妖討伐(1)
「秀吉様、政宗様、珠紀様。お帰りなさいませ」
明るい声が聞こえて顔を上げると、いつの間にか門の前まで来ており、三成君と光秀さんが出迎えのように立っていた。
そして、そのすぐ近くにはあの人影が佇んでいるのを見て、私は息を飲む。
(嘘…っ。もう安土城に…⁉早すぎる…)
「どうやら逃げなかったようだな、小娘」
今は光秀さんの揶揄に構っている暇はない。私は光秀さんを無視して、秀吉さんと政宗さんを振り返った。
「今日は付き合っていただき、有難うございました。私はやる事があるので、これから部屋に籠ります」
そう言い残すと、私は足早にその場を立ち去った。背後から三成君の声が聞こえた気がしたが、私は部屋へと突き進む。
(刀は許されないだろうから、せめて木刀を入手しないと。でないとアイツと会ったりした時や弓に何かあったりした時に戦えない。手札は多いに限る)
部屋までもう少しのところで、桶を渡してくれた女中と廊下で会った。
「お帰りなさいませ、姫様」
「ただいま戻りました。あの、昨日は有難うございます」
「いえいえ」
「今日は別の頼みがあるんですけど」
「はい。何でございましょう?」
「墨と筆、それから安いもので構わないので紙をいただけませんか?あ。それと木刀を。これは直ぐに」
「…何をなさるおつもりですか?」
不安げに眉を寄せる女中を安心させるように私は微笑を浮かべた。