第6章 妖討伐(1)
「それで、あの影は何なの?」
《印を使って力を蓄えたり、愉しむ為に獲物を狩ったりしている強力な邪気を纏った妖モノさ。
捨てられた割れ鏡が禍々しい気を集めて出来たモノらしい。大抵そういう妖は、人でも妖でも、とにかく相手を苦しめては、それを見て喜びを感じるのさ》
(最低なタイプだな……)
《お前はどうやら力が強いようだ。そこで魅力を感じた奴は、待ちきれずに影を飛ばして来たのさ》
「…っ」
《影はお前の印から精気を吸い取ってどんどん動きが早くなる。
今はまだノロマで、やっとお前を探り当てたところだけどね。フフフ。お前、あいつに触れられたら死ぬよ》
「他の人たちに危害が及ぶことはあるの?」
《印の無い奴には触られもしないよ。ま、良いじゃないか。五日印の効力はあと四日。その間逃げ回れば良いのさ》
「逃げ切れば良いのね。あと四日」
《ああ。さてさてどうなるか。見ものだねぇ》
気付けば、小物はいなくなっていた。
私はしばらく左腕を睨んで思案するが、それだけでは事が進まないと思い直し、重い足取りで茶屋に戻った。
昼から軍議があるらしく、その後すぐに城に帰ることになった。
前を歩く秀吉さんと政宗さん。安土城にいる他の武将達の顔を思い浮かべながら、私は決意する。
(この人達には迷惑をかけたくない。でも、一緒にいると何が起こるか分からない……夜だけ野宿して朝に戻れば、誰にも気付かれないかもしれない)
真剣に考えながら俯いて考えていた私は、肩越しに見つめる秀吉さんと政宗さんの視線に気付かなかった。