第6章 妖討伐(1)
外に出ると、木に寄りかかる政宗さんと入り口付近で立つ秀吉さんが待っていた。
「話はついたのか?」
「はい。明日の夕方にまた」
「そうか」
「他に行きたいところはないのか?」
「はい。机に向かってやらなければならないことはありますが……」
その時、視線を感じた私は辺りを見回した。見ると、小屋とさほど距離が離れていないところで、顔もなければ腕もない人影が静かに佇んでいた。
その影からは何の感情も読み取ることが出来ず、嫌な悪寒が走る。
(何、あれ……)
その時、左腕がズキッと痛んで私は顔をしかめた。
「おい、大丈夫か」
「顔色が悪いぞ」
心配そうに秀吉さん達に覗き込まれて、私は慌てて笑みを作った。
「大丈夫です」
「そうか。もし具合悪くなったら、すぐ言えよ」
「え?」
「じゃ、ついでに城下を周りながら案内でもするか。ほら行くぞ」
「え、あの…ちょっと…!」
私は再び、背中を押されて歩き始める。歩きながら私は視界の端に人影を捉えた。
顔は見えないものの、じっと冷たい視線を背中に感じる。
(……妖力は大して強くない。あれは無害に等しい筈なのに、何故かあの影が気になって仕方がない…………何で…どうして…)
その後、私達は再び城下に戻った。
歩きながらも行く先々で人影が視界に入っている気がして、私は否が応でも歩きながら考えてしまう。その時不意に、横から腰に手が回り、引き寄せられた。
「⁉」
次の瞬間、私のすぐ脇を子供や荷を抱えた人々が通り過ぎる。
「大丈夫か?」
秀吉さんは当たり前のように、私の顔を覗き込んでくる。どうやら、秀吉さんが私を引き寄せくれたらしい。
慣れない異性との距離感に不覚にも鼓動が跳ね、顔に熱が集まるのが分かる。
「なぁに赤くなってんだ?」
そんな私を政宗さんがニヤついた顔で腕を組む。
「……っ」
私は慌てて秀吉さんの腕から離れた。
「な、なってません!」
「秀吉に惚れたか?」
私はニヤけた顔を浮かべる政宗さんに苛立ち、みぞおちに肘を打ち込んでやった。
「うぐっ!」
「なわけあるか。戯け」
続いて秀吉さんが政宗さんの頭に拳骨を食らわせる。
「いでっ!てめぇまで何すんだ、秀吉!」
政宗さんが痛むみぞおちと頭を押さえながら、私達を睨む。
「今のはお前が悪い。珠紀をからかい過ぎた」