第6章 妖討伐(1)
私は俯いた。本来ならば私の素性は話すべきではないもの。話せば被害が及ぶ可能性を増すことに繋がる。
(……でもこの人は、腹を割って辛い過去を話してくれた。なら、私もそれ相応の覚悟を示さなければならない)
毅然として顔を上げる。
「私が弓を求める理由は、信長さん達を守りたいからです」
「なに?」
予想外の答えだったのか、老人は目を見開いている。
「本来私は、ここにいること自体が間違っている身。そして今、私は人ならざるモノとの戦いが控えています。
それと戦い、間違いを正す為の武器として、弓が必要なのです。もちろん、事が済めば早々にここを立ち去ります。災厄は、一つでも少ないに限りますから」
微かに微笑んで言う私を老人はじっと見つめた。
しばらく双方は口を開かず、沈黙がその場を満たす。軽く五分経った頃、老人の手が私に伸ばされ、手を包まれた。
「……お前さんの覚悟、確かに見た。明日の夕方にまた来て下され」
「宜しく、お願いします」
私は深々と頭を下げた。早速作業に取り掛かる老人の背を見ながら、私は小屋を出た。