第6章 妖討伐(1)
「妻と息子を殺したのは、ワシが戦で戦った武士の弟子達じゃった。『師匠の仇だ!』と言われてワシも斬られて思ったのじゃ……
ワシが戦場で斬った者達も大事な者を亡くしたのではないだろうか。ワシのように悲しみに暮れているのではないだろうかと。その悲しみの原因がワシであると思った瞬間…戦も何もかもが嫌いになった。このまま死んでも良いとさえ思った。
此処は城下から外れとるし、ワシは武士なんかじゃない。ワシの代わりなど幾らでもいると」
老人はそこでお茶をすすった。一呼吸置いて、再び口を開く。
「その時、見廻りをしていた秀吉様に助けられたんじゃ。
その後、ワシは信長様に呼ばれた。剣の道は途絶えても、俺の為に力を振るえと仰って下さったのじゃ。
正直に言えば、戦事には二度と関わりたくなかった。しかし、信長様なら天下布武を為して要らぬ世を作って下さると、そう思わされたんじゃ」
「……あなたは、弓は人の命を奪う武器だと仰いました。戦をするにしても、信長さんという人が扱えば、犠牲は良い方に済むと仰るのですか?」
「…………そうとも言えるのかもしれん。せめてワシが出来るのは犠牲を少なくする為に動いている信長様の手伝いを微力ながら手伝うことじゃ」
老人は顔を上げて私を見た。
「ワシは話したぞ。お前さんが弓を求める理由は何じゃ」