第6章 妖討伐(1)
「何だよ、人を獣みたいに」
「どこか違いましたか?」
「家康、てめぇ……」
私を挟んでギャンギャン会話が繰り広げられる。
上座にいる信長様へチラッと視線を向けると、普通に食事をしながら、楽しそうに武将達の会話を眺めていた。
会話自体は多くないものの、何気ない穏やかな広間の雰囲気と生きていることを実感させてくれる食事に、胸が暖かくなる。
この風景が、この人達の日常なんだということがしみじみと伝わってきて、私は気を引き締めた。
(私には守るべき使命が、定められた宿命がある。その災いにこの人達を巻き込むわけにはいかない。
とりあえず今は、用心棒として頼める妖か神を探すのが賢明。でも見たところ、この安土城には小物しかいなさそう……人づてならぬ、妖づてで探してみるか……まぁ口契約にはなるけど)
「珠紀」
不意に信長さんに名前を呼ばれて、私は声の方に向き直った。
「光秀から話は聞いた。今日はどうする気だ?」
微かに目を見張って光秀さんを見ようとするが……
(あれ、いない…)
いつのまにか光秀さんは姿を消していた。辺りを見回すものの、とうに気配はない。私は仕方なく口を開いた。
「色々とやるべきこと、揃えたいものがあるので城下にでも行こうかと思っています」
「秀吉。付き合ってやれ」
「はっ」
そう言われた秀吉さんは、昨日のように気を剥き出しにしてきた。
(うわぁ…先が思いやられる……)