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【イケメン戦国】 時を翔ける巫女

第4章 安土城(1)


「じゃあ俺は信長様に報告してくる。これに着替えておいて」
「……はい」

 家康さんは手にしていた着物を私の枕元に置くと、そのまま踵を返して出て行った。
気配が遠ざかると、私は深く溜息を吐く。

(…どうにかして帰らないといけないのに…厄介な人に目を付けられちゃったなぁ。そんな暇ないのに)

 とりあえず、枕元の着物に手を伸ばす。

「わ、綺麗……」

 状況を忘れて思わずそう呟いてしまう程、その着物は豪華で綺麗なものだった。

(さすが織田信長。すごいな……でもこれだと動きづらい)

「袴ってないのかな?」

 だが、いくら置いていかれた物を見ても袴は見つからない。

「はぁ……仕方ないか」

気合を入れると、私は立ち上がって慣れた手つきで着物を身に纏っていく。
もともと家の事情で着物を着る機会が何度もあったため、所作は流れるように進んでいった。

「さてと。この後は?」

 そう思った矢先、気配を感じて天井板に目を向ける。
すると、小さくコンコンとノックするような音がした。

「……もしかして、佐助君?」

 天井板の一枚が外れ、佐助が顔を出した。

「当たり。今大丈夫?」
「うん、どうぞ」

 佐助は音を立てることなく私の前に着地した。

(もう立派な忍者だな、佐助君)

「あの後、やっぱり様子が気になって追いかけてきたんだ。
お陰で状況が粗方理解出来たよ。珠紀さん、大変なことになってるみたいだね」
「うん。正直言って悪い予感しかしない」
「珠紀さん。不本意かもしれないけど、しばらくはここに留まった方が良いと思う」
「え、何で?」
「いくら珠紀さんに武術の心得があっても、ここは戦国時代。武将達に守ってもらう方が安全だ」
「でも、私は……」
「君の家の事情のこと、多少は分かってるつもりだよ」

 その言葉に私は口を噤む。

「……佐助君、隠れ家みたいな所ってない?」
「え?」
「私はこれ以上、歴史の表舞台に立っちゃいけない。家の為にも。だから――」
「焦らないで、珠紀さん。現代に帰れないわけじゃないんだ」
「え?」
「根拠や原理は未だに不明で俺も調査中なんだけど、データを元に計算すると、次にワームホールが出現するのが、三ヶ月後だと分かった。
うまく接触出来れば現代に戻れる可能性が高い」
「三ヶ月……」

 思ったより長い時間になりそうだ。
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