第4章 安土城(1)
「家康!」
手の中の温かさを感じながら、安土に着いた二人は、門に出迎えに来ていた一人の名前を叫ぶ。
「秀吉様、政宗様。お帰りなさいませ。一体どうなさったのですか?」
暢気に聞く三成を押しやり、秀吉は言った。
「珠紀が倒れた!診てやってくれ!」
家康と呼ばれた男は、眉間に皺を寄せた後に頷いた。
「分かりました。出来るだけ揺らさない様に。俺の部屋へ」
そう告げると、珠紀を抱えた政宗と共に駆け出す。
「御館様に報告してくる!」
そう言って秀吉は三成に馬を任せ、天主へ急いだ。
慌しく駆けて来る足音に信長は人物を思い浮かべ、声をかけた。
「秀吉か?入れ」
いつもとは違い、雑に襖を開け放った秀吉はすぐに座り込む。
「戦でも始まるか?」
少し口の端を上げ、からかう様に問いかける。
秀吉は頭を下げたまま一気に捲くし立てた。
「申し訳ございません……あの女子が倒れました。詳しくは、後程政宗と共に御報告に上がります」
「そうか。下がれ。俺も後程様子を見に行く」
「はっ!」
秀吉は、すぐに立ち上がると一礼をし、来た時と同じ様にバタバタと駆けていく。