第3章 森にて
急に、氷漬けになったように、身体中が冷え始めた。
頭のどこかで大男の妖気に当てられたのだと冷静に分析するが、フッと力が抜け、膝から崩れ落ちる。
「おい!」
慌てた声が聞こえたかと思うと、力強い腕に抱きとめられた。
霞む視界の中で動揺した秀吉さんと政宗さんの顔が見える。
「少し、休めば……平、気――」
「政宗。急いで安土に戻るぞ!」
秀吉さんは私の言葉を遮りながら、自分の羽織を脱いで私に被せてくれる。
「あぁ」
「ダ、メ……置いて…行って……」
「そんな様で何言ってる」
小さい声で言うが、二人は聞く耳を持たない。
視界が暗くなり、音が遠のいていく。凍えそうな寒さの中で、触れている箇所だけが温かい。
(迷惑かけたくないのに……)
フワリと身体が浮く。うっすらと目を開けると、秀吉さんが私を抱き上げていた。
霞む視界の端で、政宗さんが先に馬に乗っている。秀吉さんは振動を与えないように歩き、私を政宗さんの腕に預ける。
「二度と離さねぇーからな」
政宗さんの呟きが耳に届いたのを最後に、私は意識を手放した。