第4章 犬のきもち
朝練が終わって急いではーちゃんのクラスに向かう
ドアを覗き込んでも見当たらない
『この時間ならいると思ったのに…。』
『長太郎?おはよう。何か借りにきたの?』
急に目の前からはーちゃんの声がしてって…
そんなことよりも!
『はーちゃん!?髪!切ったの!?』
『あぁ、昨日ね。もうすぐ冬なのに切っちゃった。変?』
『うぅん!全然変じゃない!可愛いよ。』
『それで、何か用事?』
そういえば口実を考えて無かった
どうしよう
昨日会えなかったから会いにきたなんて
理由にならないよな…
『あ…えっと、あの!辞書!英和辞書忘れちゃって。貸して欲しいんだ。』
『いいよ。ちょっと待ってて。』
そう言って背を向けたはーちゃんはなんだか前よりも大人に見えた
『はい、今日は英語の授業無いから慌てて返さなくてもいいよ。』
『ありがとはーちゃん。』
『うん。それじゃ、長太郎もSHR始まるよ。』
『そっか、じゃあ。行くね。』
廊下を歩き出すと
背中の方が気になった
はーちゃんまだ俺の方見てるのかな
振り向きたいけど
怖くて振り向けなかった
何が怖いのか自分でもわからなくて
どうしてあんなに普通にしていられるんだろう
昨日も今日も
俺はこんなに原因不明の苦しみに襲われてるのに
いつもなら助けてくれるのははーちゃんだった
返事を急かしもせずに
あんなにいつも通りみたいに振舞って
なんか
俺一人だけ子供みたいだ
どしたらいいんだ