第5章 誕生日
気づけばもう日が暮れて
すっかり夜になっていた
恋人の部屋の扉を開けると静まり返っていて
不安に駆られると
静寂の中に寝息が聞こえた
ソファを覗き込むとスヤスヤと制服姿のまま恋人が寝息を立てていた
付き合いはじめてからまだ手しか繋いだことのない私に
悪魔が小さく囁いた
『キスしちゃおうかな。』
付き合っているし、キスしたところで何の問題もないだろう
だけど付き合い始めてから
幼馴染は恋人になり
少しでも私をリードしようと頑張っていたようにも思える。
その気持ちを裏切るのも気が引けたけど
私の身体は彼のそばに腰を下ろし
彼の唇にゆっくりとくちづけていた
柔らかな感触の後に罪悪感が迫る
離れようとした瞬間
指先で髪を撫でられた
驚いて身体を起こすと
『はーちゃんこれって誕生日プレゼント?』
『!?、起きてたの?』
『うん。寝たふりしてた。』
『嬉しいな。誕生日にファーストキスなんて。』
恥ずかしくて顔も見られない
『#NAME3#?どしたの?』
『別になんでもない。』
『顔真っ赤だよ?恥ずかしかったの?』
手を引いて包み込まれるように抱かれるとなおさら顔が熱くなった
『俺は嬉しかったけどなぁ。あ、チョコは?』
『あそこ…。』
『やった!後ではーちゃんに食べさせてもらおう。』
『自分で食べなさい。』
『えー!誕生日くらいあまやかしてよー。』
『ばか。』
『さっき寝たふりしてたの怒ってるの?』
『うるさい。』
『はーちゃん?好きだよ。だから機嫌直して?僕今日誕生日なんだよ?』
『……誕生日おめでとう。』
『うん。じゃあもう一回キスして?』
『…ばか。』