《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第5章 嫉妬とキスをかき混ぜて
髪を撫でられ、クイと顎を持ち上げられる。
え……な、なに?
エクボの顔がスッと目の前に近づいた。
「ゆめ、おまえさんも因果な女だぜ。霊幻みたいなどうしようもない男に惚れちまうんだからな」
少し寂しげに微笑むエクボ。思わずドキッとする。
「おいっ! やめろ! エクボ!!」
霊幻さんが怒鳴ると同時にエクボの唇が頬を掠めた。煙草の匂いがふわりと香る。
「っ!?」
今、キスされた!?
驚いて頬を押さえると、エクボはクックッと楽しそうに笑いながら、私から離れた。
「なあ、霊幻。おまえ、もっとゆめを大切にしろよ。ちゃんとデートにつれていってやってるか? 淋しい想いをさせてないか? セックスだけじゃ女はすぐに逃げてくぜ。余裕こいて油断してたら、あっという間にどこかの男に奪われるぞ?」
霊幻さんが悔しそうに歯ぎしりをした。
「んなこと、いわれなくてもわかってるよ!」
「本当か? これからもゆめを泣かせたら黙っちゃいないからな。なんなら、イケメンの人間に憑依して俺様がゆめと付き合ってやってもいいぜ」
「んなもん、ダメに決まってんだろ! おい! ゆめ! エクボにかまうな! さっさと帰るぞ!」
霊幻さんが私の腕を無理やり引っ張る。もしかして、ヤキモチ妬かれてる? それならすごく嬉しいんだけど。
「でも霊幻さん、エクボは本当に助けてくれただけだから……」
「関係ねぇ! 帰るぞ! てか、もうエクボとは二人きりになるな。モブ、ほらおまえも行くぞ」
霊幻さんが私とモブくんを両手で引っ張りながら歩き出す。
「あ! 霊幻さん! 待って! まだ私の下着が……」
「っ!」
霊幻さんはくるりと向きを変えると、エクボの手から強引に私のショーツを奪いとった。
「なんだよ、霊幻。焦ってんのか? ゆめが俺様を好きになるのも時間の問題かもなぁ」
エクボがニヤニヤしながら煽る。絶対にわざとやっているでしょ。
「チッ……うるせぇよ。ゆめは渡さねぇからな。行くぞ」
「っ!」
今、『ゆめは渡さねぇ』っていった!?
胸が熱くなる。
霊幻さんに引きずられながら、私はふと振り返った。満足げに笑いながら、守衛さんの身体から出ていくエクボが見えた。