《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第5章 嫉妬とキスをかき混ぜて
『すぐ終わるだと? ずいぶんと見くびられたものだな……』
男が私たちを睨む。憎悪のこもった霊気が立ち昇り、ぐんと密度を増した。
「俺様だけならまだしもゆめがいるからな。何がなんでも数分でキメてやるぜ」
『フン……。ならば、その女から取り殺してやる。おまえはあとでじっくり――』
そのとき、黒い影が突然目の前を横切った。
え????
「対被憑依者 飛びヒザ蹴り!!!!」
叫び声とともに男の身体が真上に吹っ飛ぶ。その勢いで取り憑いていた悪霊がふわりと男から離れた。
「れ、霊幻!?」
「霊幻さん!?」
エクボと私は同時に声を上げた。
『対被憑依者 飛びヒザ蹴り』――憑依された者に飛びヒザ蹴りをかまし、意識を強制的に飛ばす霊幻さんの必殺技――そう、攻撃したのはエクボじゃない。霊幻さんだ。どこから来たのか、いきなり現れて男に一発食らわしたのだ。
「霊幻!? おまえ、何やってるんだ!」
叫ぶエクボを無視して、霊幻さんはうしろを振り返った。
「悪霊は離れた! モブ、今だ! 溶かせ!」
霊幻さんの背後から音もなく現れたモブくんが手をかざす。
白い閃光が辺りを包んだ。霊が悲鳴を上げる。
「っ……!」
あまりの眩しさに目を細めた瞬間、悪霊は小さくなって消え失せた。
「ふうっ。よくやったな、モブ」
霊幻さんが息を吐く。
「師匠、今のそこまで強くない霊でしたよ。僕を呼び出さなくても……」
「っ!! ば、ばっか、モブ! これも修行だよ、修行! 弱い霊を溶かすときにこそ力をコントロールする練習ができるんだよ! だから、わざわざおまえを呼んでやったんだ!」
「はぁ……本当かな……」
エクボが呆れたようにため息をついた。
「ったく、相変わらず無茶苦茶だな。せっかく俺様が上級悪霊のすごさを見せつけてやろうと思ったのに」
霊幻さんはスーツの襟を直すと、こちらに顔を向けた。
「あ? おまえ、顔に見覚えがあるな。中に入ってんのはエクボか? ゆめを抱きしめて、何やっている?」
声にトゲがある。珍しくイラついているみたいだ。