《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第5章 嫉妬とキスをかき混ぜて
数コールのあと、大好きな霊幻さんの声が聞こえた。
『おう、ゆめか? どうした?』
「お疲れさまです。実習が入ってしまったので、今日はお休みさせてください」
見上げると、もうエクボの姿はなかった。帰ってしまったようだ。
『実習? そうか、わかった。今日は遅くなるのか?』
「はい。あ、実習のレポートを出さないといけないので、もしかしたら明日も行けないかも。また連絡しますね」
『ああ、来れないのは別に構わない。それより帰りが遅くなるなら気をつけろよ? 誰か一緒に帰ってくれる友達はいるのか?』
も〜、霊幻さんってば心配しすぎ! 私もう大人なのに。
「大丈夫ですよ。子供じゃないし夜でも一人で帰れます」
『ばっか! そういう意味じゃない! 危ないんだよ! おまえの大学は最近――』
そのとき、
「すみません」
突然うしろから肩を叩かれた。
「?」
私はスマホを耳にあてたまま反射的に振り返る。
瞬間、目の前が真っ暗になった。
え?
頭の上から布を被せられたのだと気づくのに数秒かかった。背後から突然誰かに羽交い締めにされる。
「っ!?」
スマホがガチャンと勢いよく地面に落ちる音。
『おい! ゆめ! どうした!?』
霊幻さんの声が聞こえた。
布の上から口を押さえられる。声が出せない。
何? 誰? 息がこもる。前が見えない。
必死に逃れようとしても相手は私の体をガッチリと押さえ込んでいる。かなり力が強い。
『ゆめ! 返事しろ! 今の音はなんだ? 聞いてないのか? ゆめ!』
霊幻さん……。
口を塞がれたまま、ズルズルと身体をひきずられる。
『ゆめ! おい!』
だめ……。返事しなきゃ……。
遠ざかる霊幻さんの声。なすすべもなく連れて行かれる私。
どうしよう。怖い。誰か……!
かかとに擦れるコンクリートの感触が突然柔らかくなった。足首にチクチクと何かが当たる。たぶん草だ。
次の瞬間、私の身体は勢いよく地面に投げられた。倒れると同時に頭の布を取られる。
「ひっ!?」
目の前には、知らない男性が立っていた。帽子を深く被り、顔は見えない。ヨレヨレのネルシャツに汚れたジーンズ。