《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第4章 チョコより甘く愛されて
「レストランを予約!? 霊幻さんが!?」
嘘でしょ!?
「ああ、せっかくのバレンタインだったからな」
「それは……どこのラーメン屋ですか?」
「ばっか、おまえ! さすがに今日はラーメン屋じゃねぇよ!! ちゃんとしたレストランだ! 調味タワー最上階のフレンチだよ!」
霊幻さん、ちゃんと考えてくれてたんだ……。
私は霊幻さんの腕にしがみついた。
「霊幻さん」
「あ?」
ふてくされた顔で私を見る。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「でも間に合わなかったぞ?」
「予約してくれてたことが嬉しいんです」
「そんなもんか?」と不思議そうに首をひねる霊幻さん。
そんなものなんです。
私はバッグからチョコレートの箱を出した。昨日作ったものだ。チョコタルトとトリュフのセット。けっこう時間がかかった。
「霊幻さん、どうぞ。おいしくできたかはわからないんですけど」
「おお! マジかよ! チョコか! まあ、こんな時間まで鞄に入れてたなら溶けただろうな」
「もうっ、そんな言い方はないでしょ!」
軽く睨むと、霊幻さんは笑いながらチョコを受け取った。言葉のわりには笑みが溢れている。
「いいんだよ。溶けていても。ゆめから貰えたチョコならなんだって嬉しいからな。ありがと」
今日は散々だった。大学が休みなのをいいことに朝から除霊に駆り出され、くたくただ。
おまけに霊幻さんってば、お金がない人からは報酬を受け取らないし、料金を払わず逃げた依頼人も追わないし。最後の仕事も依頼人が気絶してタダ働き。損ばっかり。
それでも彼は気にしない。長い目で見て無理に取り立てればトラブルが起こってかえって面倒だと判断したに違いない。私はそういう冷静な霊幻さんが好き。
「さてと、これからどうする? さすがに高級フレンチ食べ損ねたあとにラーメンを食べる気にはなれないしな」
霊幻さんが顎に手を当て考え込む。
「霊幻さん」
「ん?」
私は背伸びをして、そっと霊幻さんに耳打ちした。みるみる霊幻さんの顔が赤くなる。
「おまえ……」
「ダメですか?」
「欲求不満か? それとも生理前か?」
「もうっ! じゃあ、やめます?」
霊幻さんは私の肩に手を回した。
「いや、やめない。行く。途中で何かうまいものでも買ってくか」