《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第4章 チョコより甘く愛されて
「まずいっ! よけろ! 取り殺されるぞ!」
俺は反射的に依頼人の前に飛び出た。
「霊幻さん!?」
ゆめがハッと目を見開く。
悪霊が手を振りおろした。
瞬間――
目の前に走る白い閃光。苦しそうな悲鳴が上がる。ただし、俺のじゃない。悪霊の悲鳴だ。
あいつか……。
形勢逆転。すべてを悟った俺は苦しむ悪霊にビシッと人差し指を突きつけた。
「後悔先に立たず! 天才霊能力者・霊幻新隆と対峙した瞬間、すでに決まっていたのさ……てめぇの成仏はなッ!!」
断末魔の叫びが耳をつんざいた。光が飛び散り、悪霊の姿が消える。
あとに残ったのは、荒れた寝室、呆然としているゆめと気絶した依頼人。ガラスの割れた窓から冷たい風が吹き込んだ。
危ないところだったな……。
俺は息を吐くと振り返った。
「モブ、よくわかったな。ここが……」
寝室の入り口で右手をかざしていたモブが静かに頷いた。悪霊を除霊したのはもちろん俺じゃない。モブだ。
「やっぱり悪霊でしたね。ゆめさんが気になることをいっていたので、もしかしてと思って来ました」
「気になること?」
モブは寝室に入ってくると、部屋の中を見回した。
「お客さんを見て、ゆめさんが何気なくいったんです。『この人、今日はバレンタインなのに相談所なんかに来ていいのかな? 家で彼氏さんが待ってるのに』って」
「なに!?」
「ゆめさんが視たのは、彼氏さんじゃなくてさっきの男の霊だったんですよ。たしかに彼氏さんが待っていたら除霊相談には来ないですよね。それで家に何かあるんだと思いました」
俺はゆめを見た。彼女はまだよくわかってないのかキョトンとしている。