《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第4章 チョコより甘く愛されて
「霊幻さん、霊の声がします!」
「何!? どこからだ?」
ゆめは窓を見つめた。
「家の中です。これは……寝室にいるみたいですね。若い男性の霊です。最初は依頼人の彼氏さんの声なのかと思ってあまり気にしてなかったんですけど……」
「若い男性の霊? 他にわかることはないか?」
ゆめは目を瞑った。
「怒りと悲しみの感情が強いみたいです。去年のバレンタインに依頼人にフラレて自殺した映像が視えます。未練があって彼女を道連れにしてしまおうと考えているようですね」
「おまえ、そこまでわかるのか!?」
次の瞬間、家の中から女性の悲鳴が聞こえた。
「っ! 依頼人の声だ!」
俺たちは玄関から駆け込む。靴を脱ぎ捨て勝手に中に上がった。
ゆめの話が本当ならヤバイ状況かもしれねぇ。依頼人は命を狙われてるってことだ。俺たちだけでなんとかなるか?
「霊幻さん、こっちです!」
ゆめは部屋の場所まで視えているのか迷いもなく二階にあがる。寝室に入った瞬間、ぼんやりと宙に浮かぶ不気味な男が目に入った。その横で腰を抜かしている依頼人。立てないようだ。
男がゆっくりとこっちを見る。
『なんだ? 霊能力者か? そっちの男は特に力もないようだが。くだらないもの呼びやがって……』
「チッ! 悪霊か! 仕方ないっ!」
ゆめに無茶はさせられない。モブがいないなら俺がなんとかするしかない。効かないのは実証済みだが、背に腹は変えられん。
俺は『伯方の塩』の袋を取り出した。
「悪霊めっ! 死んでからも女に付きまとうなんてストーカーかよッ! 女々しいことしてんじゃねー! くらえッ! ソルトスプラッシュ!!」
霊に向かって食塩を激しく撒き散らす。俺の一番の必殺技だ。
『あ? なんだ、これは? 塩か? くだらん』
霊は苦しむ様子もなく、さっさと塩を払った。
「くそっ! やっぱり効かないか!」
スーパーで買った塩じゃ霊は溶けない。どうする?
悪霊はニヤリと笑うと、依頼人のほうへ手をふりかざした。
「ひいいっ!?」
依頼人の顔が恐怖に引きつる。