第1章 時空を超えて
(昨夜から考えていたけど、まるで時代を越えてしまったような......)
言い知れぬ不安を感じると、鼓動が高鳴っていった。
(でも......まさか、そんなことが本当に?)
ユキ「あらやだ、顔色が悪いわよ」
私の顔を覗き込み、やがてユキちゃんが力強く言う。
ユキ「心配しないで、瑞希。ここで会ったのも何かの縁よ。ここにいる間は、生きていけるようにあたしがお世話してあげるから」
瑞希「え......」
ユキちゃんの言葉に顔を上げた、その時...。
???「邪魔するぞ」
呉服屋ののれんをくぐり、男の人が姿を現した。
???「......なんだ、取り込み中か」
ユキ「あら土方さん、どうしたの?」
(土方、さん......?)
龍馬さんの名前を聞いた時と同じように、何かが私の中で引っかかる。
土方と呼ばれた男は息をつき、玄関先に腰掛ける。
土方「近藤さんに頼まれたもんを受け取りに来たんだよ」
そうしてどこか面倒くさそうに、頭をかいた。
ユキ「うふふ、土方さんを使えるのは近藤さんだけね」
土方「まあな......」
わずかに振り返った土方さんが、ふっと目を細めて答える。
土方「他のやつにまで使われたら、身がもたねえよ」
そのとき不意に、土方さんと目が合う。
土方「............」
(あ......)
黙ったまま静かに視線が重なり、私が目を瞬かせると...。
ユキ「あ、そうだわ」
すると突然、ユキちゃんが思いついたように声を上げた。
ユキ「いいこと思いついた!」
土方「......あ?」
呉服屋から外に出ると、青空から真っ直ぐに陽が差していた。
瑞希「............」
眩しさに目を細めため息をつくと、先を歩く土方さんの背中を見やる。
私は土方さんの案内で、ユキちゃんが紹介してくれるという食事処へと向かっていた。
脳裏に、先ほどのユキちゃんの言葉が蘇る。
『ユキ「「四季」っていう名前の食事処なんだけど、評判はいいのに人手が足りなくって困ってたのよ」
ユキちゃんが笑みを浮かべ、話してくれた。
ユキ「ユキからの紹介だって言えば、住みこみで働かせてもらえるはずよ。まずは働き口を確保しないと、生きていけないからね!」