第1章 時空を超えて
龍馬「へえ、瑞希ね」
私の名前を聞くと、男性はそのまま背を向けた。
龍馬「......じゃあな」
瑞希「あ、あの......」
思わず引き止めようとするものの、その人は振り返らずに行ってしまう。
ユキ「龍馬さんったら、相変わらずねえ」
腰に手を当て、ユキと呼ばれる男性がため息をついた。
(龍馬、さん......?)
どこか聞いたことのある名前の響きに、胸の奥がかすかにざわめいた...。
ユキ「んー...なるほどね」
ユキさんの家だという呉服屋まで連れて行ってもらうと、私はできる限り今の状況を説明していた。
(話をして、何か手掛かりが掴めればいいんだけど......)
ユキ「でも分かったことと言えば、あなたが困ってることくらいね」
瑞希「......はい」
(そうだよね......)
ユキさんの言葉に、私は顔をうつむかせる。
(自分でも、置かれている状況がはっきりとわからないなんて。私は、これからどうすればいいんだろう......)
考えていると、ユキさんが励ますように顔を覗き込みいった。
ユキ「とにかく、その格好は目立つわね」
瑞希「え......」
(そういえば、ユキさんや龍馬さんも着物だったから......)
見上げると、ユキさんの笑みが見える。
ユキ「早速、着替えを用意してあげるわよ♪」
そして、翌朝...。
ユキさんの好意で呉服屋に泊めてもらった私は、用意してもらった着物に着替えを終えて部屋を出た。
ユキ「あら!やっぱりぴったりだったわね」
瑞希「何から何まで......ありがとうございます。ユキさん」
(こうしてお世話をしてくれるのが、ユキさんみたいな方で本当に良かった)
お礼を言うと、ユキさんがにっこりと微笑み言う。
ユキ「いいのよ、困った時はお互い様なんだから。あたしのことは、ユキちゃんってよんでちょうだいね♪」
そうして腕を組むと、わずかに眉を寄せた。
ユキ「さあ、ここからどうするかよね......」
(それは......)
瑞希「............」
ユキちゃんの前に立つ私は、着替えた自分の姿を見下ろす。
(この服もそうだけど......やっぱり、私の知っている場所とは違う)