第1章 時空を超えて
瑞希「あ......っ」
篠宮くんの手が私の腕をつかんだ。
しかし私の体はぐらりと傾き、階段をまっさかさまに落ちていった。
(............!)
気が付くと私は、全身にあたたかな体温とわずかな振動を感じていた。
(ここは......)
気が付くと風が頬を撫でていることに気が付く。
瑞希「え......っ」
同時に誰かの背中におぶわれていることに気付いた。
(私......何でこんなことに!?)
???「起きたのかよ」
聞こえてきたのは、低くどこか不機嫌そうな声だった。
瑞希「っ......あ、あの...私」
(思い出さなきゃ。確か、階段から落ちて......)
???「道端に転がっちょたがやき拾ったちや」
瑞希「え......?」
戸惑う私の身体をおろすと、その人が振り返る。
???「起きたんなら自分で歩け」
そして持っていた、私のカバンを差し出した。
(あ......)
???「............」
カバンを受け取りながら、私は目の前で眉を寄せる男性を見上げる。
その端正な顔立ちにじっと見下ろされると、妙な迫力に鼓動が跳ね、私はあわてて視線をそむけた。
そして、ようやく気が付く。
(あれ?なんだか、おかしい......。この人は何で、こんな格好をしているんだろう)
そっと窺うと、それはまるで時代劇に出てくる衣装のようだった。
(これもまた、夢?でも......)
かすかな痛みを感じて見下ろすと、いつの間にすりむいたのか、腕にかすり傷が残っている。
(夢の中で痛みを感じるなんて......まさか)
瑞希「......っ」
あわてて見渡すと、辺りは外灯もなくコンクリートの道もない。
土の地面の上に、木でできた長屋が続いていた。
(そんな......ここは......どこ?)
月明かりだけが照らす夜道で、私は息をのむ。
すると目の前の男性が、息をつき口を開いた。
???「おい。呆けるより先にゆうことがあるろう」
瑞希「え?あるろ......」
慌てて見上げると、男性がぴくりと眉を寄せる。
(今のは日本語、だよね......うまく聞き取れない)
瑞希「あの、もう一回」
???「............」