第3章 坂本龍馬編☆第一話♡
龍馬さんがささやくように言い、視線を木の向こう側へと向けた。
(龍馬さんは誰かに追われているの?)
そこには、誰かが現れたようだった。
(でも......)
見上げると、その様子は狙われているというよりも何か戸惑っているように見える。
瑞希「............」
(とにかく、じっとしていたほうがいいのかな......)
伸びた二人分の影は、ちょうど木の影に隠れていた。
息を潜めていると、私は不意に気づく。
(綺麗な顔......)
龍馬さんの端正な顔立ちに思わず目を奪われていると、
視線に気づいた龍馬さんが目を向け、眉をひそめる。
龍馬「............」
やがて不機嫌な声で、ささやくように言った。
龍馬「......なに見てんだよ」
瑞希「っ......」
龍馬さんの低い呟きに、私は顔をうつむかせた。
瑞希「............」
(つい見てしまっていたけれど、そんな言い方しなくてもいいのに。
龍馬さんがもっと優しければ、素敵だと思えるのにな)
やがて足音が遠ざかると、龍馬さんの手がようやく木から離れていった。
(やっと、行ったみたい......)
瑞希「............」
私はほっと息をつくと、龍馬さんを見上げて尋ねる。
瑞希「あの......何かあったんですか?」
龍馬「............」
すると龍馬さんが顔を向け、私を見下ろし口を開いた。
龍馬「......巻きこんで悪かったな。でも」
足を踏み出し、龍馬さんが私から離れていく。
龍馬「お前には関係ない」
瑞希「......!」
その言葉に、私は思わず眉を寄せた。
(そんな言い方って......)
そう思っているうちにも、龍馬さんが背中を向ける。
龍馬「じゃあな」
瑞希「待っ......」
思わず追いかけようと足を踏み出した、その時...。
瑞希「......っ」
突然に何かがちぎれる音が響き、私の身体が前のめる。
(なに......?)
足元を見下ろすと、はなおの紐が切れてしまっていた。
(あ......)
脳裏に、以前に市中で会った桂さんの姿が蘇る。
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桂 「はなおが切れたのか?」