第2章 出会いと恋の始まり
顔を上げたケイキさんが、頬杖をつき私を見上げた。
ケイキ「お前の言う通りだな、瑞希」
瑞希「え......」
ケイキさんに見つめられ、鼓動が大きく跳ねる。
息をのんだ、その瞬間...。
篠宮「先輩ー!」
台所の方から篠宮君の呼び声が聞こえてきた。
篠宮「こっち手伝ってくれない?」
瑞希「あ......じゃあ、私は戻りますね」
私ははっと顔を上げると、ケイキさんに小さく頭を下げて、慌てて台所の方へと駆けていった。
ケイキ「本当に、面白い女だ......」
後ろでケイキさんが呟いた声は、私の耳には届かなかった...。
そして、その夜...。
瑞希「............」
私の部屋に戻ると、今日までにあった様々なことを思い出していた。
(ここに来てから、本当に色んな人と出会ったけれど)
そして目を閉じなあら、思う。
(この出会いは......私にとってどんな意味があるのかな)
それはこの時代で目を覚ました時から持っていた、思いだった。
(私は一体、何のためにここに来たんだろう)
目を閉じ息をつくと、昼間の霧里さんとの会話が蘇る。
それは、ユキちゃんが霧里さんの着物を作っているという話だった。
『ユキ「霧里ちゃんの次のお着物なんだけど、桜柄なんてどうかしら?」
霧里「桜......」
ユキちゃんの言葉に目を細め、霧里さんがふっと口を開く。
霧里「......そう言いますれば、こなたの近くに桜の木がありんす」
瑞希「桜、ですか?」
霧里「ええ......」
霧里さんは私を見つめ、にっこりと微笑んで見せた。』
私はゆっくりと手を伸ばし、カバンを引き寄せる。
(そういえば、桜って......)
心でその言葉を繰り返すだけで、胸がわずかにざわめく。
(ここに、桜の花びらが挟まっていたんだよね......)
私はカバンの中から、あの手紙を取り出した。
まだ夜も明けきらない、早朝...。
私は部屋を抜け出し、霧里さんから聞いた桜の木を身に出かけていた。
(何だか少し、気になるから......)
胸の前で手を握ると、私は暗がりの市中を駆け抜けていく。
(確か、こっちだって言ってたけど)