第2章 出会いと恋の始まり
辺りを見渡しながら歩いていると、やがて風が吹く。
瑞希「あ......」
私は導かれれるように、再び市中を駆け出した...。
風に導かれるように、私は桜の木の前に立っていた。
満開の花が、暗闇に浮かぶように揺れている。
瑞希「............」
(すごく、立派な桜......)
風が吹く度に花びらが揺れ、辺りにざわめきを響かせる。
私は息を呑み、その光景にただ目を奪われてしまった。
(でも、不思議だな......)
やがて私は、気が付く。
(どうして今も、満開なんだろう)
どんなに風が吹いても、その花びらは少しも落ちる様子がない。
不思議に思いながら近づくと、私は持ってきた手紙を懐から取りだした。
瑞希「............」
手紙の中に挟まっていた、一枚の花びらを見下ろす。
(これも、桜の花びら......)
考えると、鼓動がドクンと音を立てて跳ねた。
(この手紙は、誰からのものなんだろう。私はいつから、これを持っていたんだろう)
私の脳裏に、出会った人たちの姿がよぎる。
瑞希「っ......」
はっと顔を上げ、私は手紙を握る指にきゅっと力を込めた。
(まさか......)
私の髪をなびかせるように、辺りにざあっと強い風が吹く。
その瞬間...。
瑞希「あ......」
月明かりに照らされて、桜の木からたった一枚だけ、花びらが空に舞うのが見えた。
瑞希「............」
花びらはひらひらと落ちると、差し出した私の手のひらに乗る。
(手紙に入っていた花びらも、この桜のものだったなんて.........まさか、そんなことないよね)
ひときわ大きく鼓動が跳ねた、その時...。
???「瑞希......」
(え?)
誰かに名前を呼ばれ、私はぴくりと肩を揺らす。
(......誰?)
胸の鼓動が、静かに高鳴り始めていた。
手にした手紙と花びらと共に、私は振り返る。
そして...。
これが私の、運命の恋の始まりだった...。