第2章 出会いと恋の始まり
(何だか、不思議だな。女の人なのに、こんなにドキドキしてしまうなんて)
やがて帰る時間になると、霧里さんが言った。
霧里「可愛らしいお嬢さん。また遊びに来てくんなまし」
瑞希たちが遊郭を去ったころ...。
別の部屋で一人、窓から瑞希が外に出ていく様子を眺める男がいた。
???「............」
襖が静かに開くと、そこから霧里が姿を現す。
霧里「高杉さん......ここにいたんでありんすね」
高杉「............」
霧里へ視線を向けることなく、高杉は外を眺めたまま口を開いた。
高杉「あいつは、何だ?」
霧里「............」
近づいた霧里が窓の外を見やり瑞希の姿に気づく。
すると唇に薄く笑みを浮かべて言った。
霧里「他人に興味を持つとは珍しい......」
高杉「ん......」
ようやく窓から視線をそらし、高杉が立ったままの霧里を見上げる。
すると霧里が高杉を見下ろし、すっと目を細めた。
霧里「そろそろ、ここを出る頃でしょう。客じゃありんせん男にこれ以上居座られると困りんす」
高杉「............」
霧里の低い声にくすっと笑みをこぼすと、高杉が壁に背を持たれる。
高杉「そうかもな」
霧里は高杉のつぶやきを聞くとすぐに、踵を返した。
しかし襖に手をかけた瞬間、ぽつりと告げる。
霧里「あのお嬢さんは、食事処の四季にいるそうで......」
わずかに振り返る霧里の笑みに、高杉が眉を寄せた。
霧里「興味があるなら、会いに行ってみたらどうでありんすか?」
高杉「............」
やがて霧里の姿が見えなくなると、高杉が窓枠に頬杖をつく。
高杉「興味、ね......」
その頃...。
四季に戻った私は、のれんを上げお店の中に入って行った。
瑞希「......あ」
途端に、見知った人の姿を見つける。
(あの方は......)
ケイキ「遅かったな、瑞希」
瑞希「ケイキさん......!」
(また来てくださったんだ)
目を細めると、ケイキさんが手の中のお酒を飲み干す。
ケイキ「ああ......新しいものを頼む」
瑞希「はい」