第2章 出会いと恋の始まり
何も言わずに見つめるその様子に、隊士たちはすぐにその場を去っていく。
私はほっと息を付き、山崎さんを見上げた。
瑞希「ありがとうございました」
山崎「......別に、いい」
顔を背け、山崎さんが呟くように言う。
山崎「頼まれただけだ」
瑞希「え......?」
(それって......)
私の脳裏に、斉藤さんの姿が蘇る。
『斉藤「気をつけていけ」』
(もしかして、斉藤さんに......?)
考えているうちに、山崎さんがすっと歩き出した。
山崎「こっちだ」
山崎さんが無表情のまま、まっすぐに廊下を進んでいく。
瑞希「あ、はい」
私は慌てて、その後ろ姿を追って行った。
山崎「近藤さんは、ここにいる」
襖の前で足を止めると、山崎さんがふと振り返る。
瑞希「ありがとうございました」
山崎「............」
お礼を告げ顔を上げると、山崎さんの頬がわずかに赤らんでいることに気付いた。
(あ......)
山崎「......礼を言われるほどのことは、していない」
それだけを告げると、山崎さんはそのまま去って行ってしまう。
その後ろ姿を見送り、私はほっと息をついた。
(何だか、可愛らしい人だったな)
そうして襖に向き直ると、手の中の風呂敷を抱えなおす。
瑞希「よし......」
呟くと、私は襖の方へと声をかけた。
瑞希「......失礼します」
..........
そっと襖を開けると、中から声が聞こえてくる。
沖田「あれ?」
そこには、小さく首をかしげる沖田さんの姿があった。
土方「あ?何でここに......」
土方さんの姿も見え、私は目を瞬かせる。
(名前を聞いてまさかとは思っていたけれど......お二人とも、本当にあの新撰組の方だったんだ......)
そんな人たちが目の前にいるということに、私は改めて驚きを隠せずにいた。
黙ったままいると、部屋の奥からはっきりとした声が聞こえてきた。
近藤「ああ、俺が頼んだんだ。悪かったな、まさか女性が来るとは思わなかったもんで」
近藤さんの言葉に、土方さんが大げさなほどの溜め息をつく。
土方「......近藤さん、勘弁してくださいよ」
近藤「まあ俺が呼んだってのが分りゃ、あいつらも悪さしねえだろ」