第2章 出会いと恋の始まり
やがて男性は足を止めると、小さく振り返るいう。
???「どうした。中に入るんだろう」
瑞希「あ、はい......」
(ついて行っても、いいのかな)
促されるまま、私は慌ててその背中を追った。
屯所の中に入ると、私は男性に続いて廊下を歩いていた。
その途中、一人の隊士が男性を呼び止める。
隊士「斉藤さん」
斉藤「...........」
黙ったまま足を止め、男性が視線を向ける。
(斉藤さんとおっしゃるんだ)
隊士と話をする斉藤さんが、やがてちらりと私を見やった。
(あ......)
瑞希「ここまでで、大丈夫です。ありがとうございました」
斉藤「そうか」
先に隊士が去ると、斉藤さんが私をじっと見下ろす。
斉藤「...........」
私もただじっと、斉藤さんの片方の目を見つめ返した。
やがて視線をそらすと、斉藤さんが一言だけを言って去っていく。
斉藤「気をつけていけ」
瑞希「はい」
すれ違う寸前、斉藤さんの着物がわずかに私の腕に触れた。
その瞬間、どこか懐かしい香りがふわりと香る。
(え......)
後ろ姿を見送りながら、私は考えていた。
(やっぱりどこかで会ったような気がするけれど......気のせい、だよね)
斉藤さんと別れ、私は近藤さんの部屋を目指して一人廊下を歩いていた。
瑞希「............」
(斉藤さんが、この先だと言っていたけど......)
辺りを見回すと、途端に不安が脳裏をよぎる。
屯所の中には男性の姿しかなく、私は多くの視線を感じていた。
(なんだろう。すごく注目されているみたいだけど......)
考えていると不意に、廊下の先に数人の男性が立ちふさがる。
瑞希「......っ」
(何......?)
隊士1「こんなところに、女が来るなんてな」
隊士2「俺たちと遊んでいかねえか」
瑞希「あ、あの......私は」
男性たちを避けようと、足をわずかに後ろに引いた時...。
(え......)
背中が、何かに触れた。
隊士1「っ......山崎さん」
目の前の隊士が、どこか焦ったような声を上げる。
慌てて振り向き顔を上げると、そこには山崎さんと呼ばれた男性の姿があった。
山崎「............」