第2章 出会いと恋の始まり
桂 「大久保、本読みながら歩くんじゃねえって言ったろうが」
大久保「龍馬と同じことを言う」
大久保さんがどこか不服そうに顔を向ける。
桂 「当たり前だ」
そう息を付いた瞬間、桂さんが何かに気づきぴくりと振り返った。
(え......?)
大久保「......あいつらか?」
桂 「ああ......龍馬は後から来る」
視線をよせる桂さんの目は、先ほどの穏やかな印象とは全く違う。
鋭い視線に、私は静かに目を瞬かせた。
桂 「じゃあな、お嬢さん」
大久保「............」
瑞希「あ......」
それだけを告げると、桂さんと大久保さんは足早に去って行ってしまう。
(きちんとお礼も言えなかった。それに......)
『大久保「龍馬と同じことを言う」
桂 「ああ......龍馬は後から来る」』
(二人は龍馬さんの、知り合いの方なのかな)
立ち上がり、私は思わず振り返る。
風が吹き、道端の土埃をわずかに巻き上げていった。
(あ......)
すると視線の先に思い浮かべていた人の姿を見つける。
龍馬「また、お前か。......あいつらのことも、知ってんのかよ」
龍馬さんがわずかに眉を寄せ、私の尋ねた。
瑞希「いえ、今ここで初めてお会いして......」
龍馬「............」
するとため息をつくように、龍馬さんが私に呼びかける。
龍馬「お前さ。これ以上俺や周りの奴らに関わるなよ」
瑞希「え......」
その言葉に、鼓動が跳ねた。
(どういう、意味だろう)
龍馬「厄介事には、巻き込まれたくねえだろ」
瑞希「............」
私は胸の前で小さく手を握り、そっと顔を上げる。
(でも、私は......)
瑞希「忠告して頂いて、ありがとうございます」
私は顔を上げ龍馬さんを見ると、はっきりとした声音で告げた。
瑞希「でも......厄介事に巻き込まれたとすれば、それは私の責任です。誰かのせいにすることは、ありませんから」
(誰かと知り合ったせいで、巻き込まれただなんて思わない)
龍馬「......へえ」
私の言葉を聞き、龍馬さんが唇にわずかな笑みをにじませる。
そして、ぽつりと呟いた。
龍馬「そういうの、嫌いじゃねえよ」
瑞希「......え?」
(今、なんて......)