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幕末の華

第2章 出会いと恋の始まり


改めて見渡したその光景に、息をついた。

(私が住んでいた場所とは、全く違う景色。タイムスリップしたなんて、信じたくないけれど......)

考えていると、突然...。

瑞希「っ......」

足元に軽い衝撃が走り、体が前のめってしまう。

瑞希「あ......」

見下ろすと、下駄のはなおが切れてしまっていた。

(そういえば、あの時......)

『沖田「気をつけてくださいね、足」』

(沖田さんが言っていたのはもしかして、はなおの事だったのかな)

私は小さくため息をつき、かがみこむ。

瑞希「どうしよう」

(このままじゃ、歩けない......)

考えていると不意に、目の前に人影が差した。

(......っ)

あわてて顔をあげ、声を上げる。

瑞希「あ、危な......っ」

???「......!」

目の前で人がぴたりと動きを止めるのが分かった。

恐る恐る顔を上げると、そこには本を閉じる男性の姿がある。

???「何でこんなところに」

瑞希「すみません、はなおが切れてしまって......」

???「はなお......?」

ふっと視線を下げる男性が、長いまつげにふちどられた目を細めた。

すると、その時...。

???「大久保、何立ち止まってんだ」

後ろから、よく通る声が響いてくる。

大久保「...........」

その男性は、大久保さんの後ろからひょいっと私を覗きこんだ。

???「ん?」

大久保「桂......」

大久保さんは名前を呟くと、静かに桂さんへと視線をよせた。

桂 「はなおが切れたのか?」

桂さんが笑みを浮かべ、持っていた荷物を大久保さんの胸に押しやる。

桂 「これ持っといて」

大久保「............」

荷物を持たされた大久保さんは黙ったまま、わずかに眉を寄せた。

瑞希「え、あの......」

桂 「ちょっと待ってろ」

突然にかがみこんだ桂さんが、私の下駄をひょいっと取り上げる。

そして持っていた布を使い、器用な仕草で直し始めた。

そして...。

桂 「ほら、これでいいだろ」

桂さんが再び地面に置いた下駄のはなおは、綺麗に結びなおされている。

(すごい......こんな短時間で)

桂さんは満足そうに笑みを浮かべて立ち上がると、大久保さんから荷物を受け取った。





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