第2章 出会いと恋の始まり
それは、ここへ来て以来、市中を回り調べたという話だった。
篠宮「何でこんなことになったのか、まったく分かんねえけど......先輩までここにいるんじゃ、もう信じるしかねえよ」
瑞希「篠宮く......」
呼びかけると、篠宮くんの視線が私の言葉をさえぎる。
そして、低くはっきりとした声で告げた。
篠宮「俺たちがいるのは、幕末だよ」
篠宮くんの言葉に、背筋がすっと冷え、同時に鼓動が大きく跳ねる。
瑞希「幕末......」
(いくら歴史に疎い私でも、知ってる)
その瞬間、龍馬さんや土方さん、ケイキさんの姿がよぎった。
(やっぱり、あの人たちは歴史の中の......)
重い静寂が、部屋の中を満たす。
(どうして、こんなことに......)
やがて黙り込んだ私と篠宮くんを励ますように、ユキちゃんが口を開いた。
ユキ「難しい話は分からないけど、とりあえずここで働いてる間は心配いらないからね!」
ユキちゃんの言葉に、篠宮くんがふっと口元をほころばせる。
篠宮「ありがとう、東雲さ......」
ユキ「あらやだ、ユキちゃんって呼んでって言ってるでしょ!」
篠宮「......ユキちゃん」
名前を呼び換えた篠宮くんが、やがて私の方に視線を向けた。
不安に眉じり下げる私の表情に気付き、ふっと目を細める。
篠宮「先輩、絶対どうにかするから心配するなよ。また、色々調べてみるからさ」
瑞希「ありがとう、篠宮くん......」
(まだまだ不安があるけど......一人じゃないと分かっただけで、すごく安心した。篠宮くんがいてくれて、よかった)
そして翌日からは、篠宮くんも食事処『四季』で働くことになった。
篠宮「これって、ここに置けばいいんだよな?」
瑞希「うん、ありがとう......」
(篠宮くんって、本当に頼もしいな......)
順応性の高い篠宮くんは、四季でもすぐに生き生きと働いていた。
(私も、まずは目の前のことを頑張らないと。何をするにしても、それからだよね)
そう考えていた矢先、のれんが上がる。
瑞希「いらっしゃいませ」
顔をあげると、入ってきたお客さんと目があった。
???「あれ?」
私の姿をまじまじと見降ろし、目の前の男性がふっと目を細める。